リスクに足踏みせず挑む。
充填機で、業界の越境を。

株式会社 型久堂

代表取締役 久川 孝之さん (左)

大学を卒業後、電気関連の商社を経て、型久堂に入社。30代半ばに代表取締役に就任。先代まで続いた職人気質なやり方を変え、設計と組み立てに特化した事業へとモデルチェンジを行い、充填機メーカーとして全国的な地位を確固たるものとした。
本部長 山田 晋之さん (右)
大手製薬会社で営業として3年連続、業績1位となる。成績を残すことが社長に事業改善を直談判できる近道と考え、そのチャンスを得るが提案を聞き入れられることはなかった。失意の中で新たな挑戦の機会をうかがっていた際に久川社長と出会い、型久堂への入社を決意した。

オーダーメイドにより、製菓向けの充填機を製造・開発。老舗和菓子店や大手製パンメーカー、洋菓子店をはじめ納入先は3000社を超える。近年は、製品の性能の高さが海外でも注目され、中国や台湾などの菓子メーカー・食品メーカーからの依頼も増えてきている。

Section 1

大阪市・今里、住宅も多い街中に一見ショールームのような機械製造の工場がある。明るくて清潔感が行き届き、わずかな物音しか聞こえてこない。通常の製造現場とは一線を画している。製菓機器メーカー・株式会社型久堂の工場だ。

型久堂はお菓子の型抜き製造からはじまり、菓子づくりの機械化とともに製菓機器の製造へと事業を展開していった。その歴史には常にパイオニア精神が息づいている。創業者である先々代は、他社がやりたがらない「あんこ」などの熱くて粘度が高い素材に着眼。素材を吸い込んで吐き出し、圧力をかけず充填できるピストン式を確立した。その特性から粒あんのように固形物を含む繊細な素材にも対応でき、「型久堂の機器だから充填できた」という声が多く寄せられている。今では国内の菓子メーカーで知らない人がいないほど、高い知名度を誇っている。

現在の工場には、3代目・久川孝之社長の先駆者としての精神が表れている。「今は“机の上の製造業”と呼ばれ、設計にもっとも時間がかかります。製造業が新たな時代に突入している中でいかに付加価値を高めるかがカギとなる」。型久堂はいち早く事業のエッセンスは「設計」にあると考え、自社での製造を組み立てのみとした。いわゆるファブレスに近いシステムが他社とは異なる工場の風景を生み、設計力の高さが大きな強みになっている。

Section 2

久川社長が会社を継いだのは30代半ば。「当時は職人気質で、収益もそれほど良くなく、会社を冷めた目で見ていました。そんな時に先代である父が64歳で亡くなり、急に会社を継ぐことになりました。私も会社も切り替わったのは、そこからです」。これまで通りのやり方を捨てないといけないと、勇気をもって改革に挑み、現在の事業モデルを構築していった。

「リスクを取らないと大きなリターンは返ってこない」。
久川社長のこの言葉を聞いたとき、本部長の山田さんは震えたという。型久堂のバリューを生んでいるのは、久川社長が恐れず挑戦してきた一歩一歩だ。山田さんはそこに惚れ込み、大手製薬会社から型久堂への転職を決めた。「前職のような安定を優先する組織では得られなかった体験を、今まさに、させてもらっています。それが私の感動体験です」。

果敢なチャレンジを歓迎する型久堂の文化は、業界の常識すら壊そうとしている。それが医療品・化粧品向け充填機への参入だ。粘度が高い素材の充填は医療品・化粧品の製造でも一般的だが、参入企業が少ないため技術革新が進んでいない。
「私たちの技術があれば、より質が高く、コストを抑えた製造ができる。それは消費者にきっと大きなメリットをもたらします。業界を越境してはいけないというルールなんてありません。もっと社会のために貢献したいという思いを優先し、業界初に挑もうと決めました」と、旗振り役を務める山田さんは語る。

Section 3

医療品・化粧品業界への参入は、自社にとっても社会にとっても“善”であると確信があった。しかし、蓋を開けてみると、思わぬ窮地に陥る。社員の異業界へのアレルギーが想像以上に強く、反発する社員が一人、また一人と去っていったのだ。

「自分の考える会社のあり方や幸せのかたちを押しつけ、社員一人ひとりの考えや思いを理解しようとしていませんでした。また、前職ではトップダウンが当たり前で、上司が言えば部下は必ず従ってくれるものだと思い込んでいたんです」。山田さんはクビを覚悟した。

しかし、久川社長は新規参入を山田さんに一任し続けた。「山田がいなくなったら、全部自分でしないといけない」と当時を振り返るが、それは厚い信頼への裏返しのように感じられた。

「ここまで信頼してくれる人は、今まで見たことがない」。
山田さんは社長の恩に報いるためにも、自分の課題と向き合いながら、なんとしても組織を立て直そうと奮起した。採用面接では、会社の問題をさらけ出し、型久堂の歴史や理念、医療品・化粧品業界参入への思いを丁寧に伝えた。共感してくれる社員が一人、さらに一人と増え、工場がふだん通り稼働できるまで人数が戻ったころ——
久川社長と山田さんは社員の口から信じられない言葉を耳にする。

「もっと仕事をふってください。もっと無理を言ってもらっていいですよ」。

今までに社員からそんな言葉をもらうことがなかった。ようやく会社の思いやお客様の喜びが社員一人ひとりに伝わったんだと、胸が熱くなったという。

Section 4

「うちの会社でいちばん仕事をしていない人、誰だかわかりますか?」
「部長、あなたですよ」

ある時、山田さんは製造部の社員から問われ、まさかの答えを聞かされる。
驚きとともに腹が立ったが、さらに予想外だったのがそれを聞いていた常務の言葉だった。
「いい会社になったなあ。あんな風に言ってくれる社員は今までいなかった」。

「営業部では私一人に仕事が集中していました。組織としては良くない形になっていたことを、その社員は冷静に評価して、マネジメントを疎かにしていることを教えてくれたんです」。山田さんは常務の言葉にハッと気づかされたという。

製造部の社員が会社を俯瞰的に見て、営業部の問題を指摘する。少し前まででは考えられなかったこと。組織が確実によい方向に向かっていることがわかる体験だった。久川社長が山田さんをどんな時でも信頼したように、社内のあらゆるところで同じような信頼関係が築かれている。互いに尊重し、対等な立場で教え合える。
「やっぱり会社の財産は“人”だと実感しました」。

人の変化は、事業全体に変化をもたらしている。型久堂の製品に対するお客様の声がこれまで以上に好意的になっているという。医療品・化粧品業界への参入に対しても、誰もが懐疑的な目でしか見ていなかったが、食品業界で長年蓄積してきたノウハウは、この業界にとっては革新的なアイデアとして顧客を驚かせている。

久川社長の恐れず挑戦してきた一歩一歩が、これからは社員全員が一丸となって踏み込んでいく一歩一歩となる。それは型久堂にさらなる飛躍を生むに違いない。

株式会社型久堂

〒542-0066
大阪市中央区瓦屋町1丁目9番13号(本社)
TEL:06-6768-7008
FAX:06-6762-7375

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