interview

よさこい人の魂を
色鮮やかな衣装に宿す。

株式会社 MT企画 代表取締役 徳永 満さん

百貨店での紳士服販売や広告代理店を経て、北九州市の手芸店に勤務。2004年、北九州市のお祭りでよさこいが始まったことを機に、よさこい衣装の制作に携わる。手芸店の廃業により独立を決意。3年間の個人事業を経て、2017年に株式会社MT企画を設立した。北九州をはじめ各地のお祭りの実行委員としても活躍。よさこいチームの良き相談者となっている。

MT企画は早い時期からオンラインオーダーを開始。運営するWEBサイト「よさこい衣装M&M」には、多種多様な生地や柄などのサンプルが掲載され、それらを参考にしながら衣装をアレンジできる。また、希望に応じて生地サンプル帳や色見本帳の無料発送も行っている。実物を見ながら衣装デザインをオーダーできるため、仕上がり時のミスマッチがなく、満足度が高い。業界のなかで「ここまでカタログが充実しているところはない」という声が多い。

成り行きでつくった衣装に
演舞者たちが魂を宿してくれた

2022年、全国によさこいの鮮やかな群舞が戻ってきた。高知の「よさこい祭り」や、札幌の「YOSAKOIソーラン祭り」をはじめ、コロナによって中止や縮小を余儀なくされた祭りが次々と開催され、街が熱気に包まれている。
「コロナのときは泣きそうでしたよ。ようやく慌ただしさが戻ってきました」と話すのは、株式会社MT企画代表の徳永満さんだ。同社は、全国に指を数えるほどしかない「よさこい衣装」専門の制作販売会社。地元の九州だけでなく、高知や札幌など各地のチームから依頼を受け、年間約100チームの衣装を手掛けている。よさこいには色とりどりの個性あふれる衣装が欠かせない。それが踊りと一体になり躍動することで、芸術的なパフォーマンスになる。衣装によってよさこいに命を吹き込んでいるが、MT企画だ。

「演舞の動画をyoutubeにアップしてくださるので、それを見るのが楽しみなんです。コンテストで賞を獲得されるチームもあって嬉しい限りです」。コロナ期間中は、和柄のマスクなどを制作販売し、なんとか事業を継続させた。どん底からようやく抜け出し、演舞者たちに喜んでもらえる衣装をつくれると徳永さんからは喜びが伝わってくる。

徳永さんがよさこいに関わるようになったきっかけはボランティアだった。北九州市の代表的なお祭りによさこいを導入する話が持ち上がり、徳永さんが勤めていた手芸店に衣装の相談が舞い込んだ。誰も和装の知識はなかったが、紳士服業界で働いたことがある徳永さんならと、サポーターとして参加することに。当初はアドバイスを求められるだけと踏んでいたが、いつの間にか衣装の制作まで手掛けていた。成り行きで制作した衣装だったが、群舞を目の当たりにしたとき「こんなに美しくて、胸が熱くなるのか」と鼓動が大きくなった。今までにないやりがいを感じ、翌年以降も衣装を担当。手芸店での廃業がわかったとき、よさこい衣装で独立しようと心は決まっていた。

当事者の悩みに応えるため
新たなオーダーシステムを開発

伝統的な和装でもなく、洋装でもない。よさこいの衣装は唯一無二の存在。だから「ノウハウがないと参入が厳しい」と話す徳永さんだが、自身のまわりには先駆者も指導者もいなかった。すべて手探りからのスタート。何も知らないからこそ、演舞者に意見を聞いたり、各地の祭りをリサ―チをしたりして、当事者の思いを受け止める。徳永さんにはその方法で学ぶしかなかった。

でも、それが徳永さんにチャンスを拓いてくれた。よさこい衣装は既製品かフルオーダーの2択であることがほとんど。既製品はオリジナル性を出せない、しかしフルオーダーはコストも時間もかかると…悩みを吐露する演舞者が多かったのだ。
「実は、よさこい衣装の多くはアパレルに精通していないイベントグッズ店がつくっているんです。一方で私は紳士服業界にいたので、イージーオーダーという考え方が当たり前のようにありました。いくつかの型紙を用意し、それをお客さんのサイズや要望にあわせて仕立てる。その考えを応用すれば演舞者の悩みに応えられると思い、業界になかったセミオーダーを導入しました」。
MT企画では、あらかじめ決められたスタイルをもとに色やチームロゴ、柄、サイズなどを自由に選んでオーダーできる。そのカタログを見るだけで、よさこい人たちの気持ちはワクワクしてくるという。

「セミオーダーのノウハウや生産体制を整えるまでは大変でした。徹夜に近い日々が続くことも多かった。もがき続けて、ようやく安定したのが3年後。時間はかかりましたが、お客様の満足度が全く違います。用意されたパーツであっても、それらの配置や組み合わせを自ら考えることで“お客様のデザイン”になる。予算も時間も気にせず自分たちの衣装づくりを楽しんでくださる姿を見るのが本当に嬉しいんです」。

よさこいチームの特別な思いを
衣装で表現する

徳永さんには、思い出深いよさこいチームがある。長崎県佐世保市のPR隊として結成された「させぼ飛躍年隊」だ。「県外の人にいい演舞を見せたいという情熱に心を打たれたんですが、自分も同じ思いを持つようになり、いつの間にか衣装だけでなく、イベントの手伝いまでをかって出るようになっていました」。高知や札幌の祭りにも同行し、給水係から撮影係、旗振り役まで、裏方として八面六臂に駆けまわった。
「翌年のために準備していた衣装を、急遽その年の高知の祭りで着ることになって徹夜で80人分の衣装をつくったこともありました。時間がなかったので、チームがバスで高知に向かう途中、北九州で衣装を積み込み、高知に着いてから補正したんです。まさに突貫でしたね」と楽しそうに振り返る徳永さんの笑顔が印象的だ。

「させぼ飛躍年隊」のメンバーと深く関わるほどに、彼らの情熱の源には「地元を盛り上げたい」「まちおこしに貢献したい」という願いがあることを強く感じるようになった。さらにそれは「させぼ飛躍年隊」だけとは限らない。ほぼすべてのよさこいチームの願いであることがわかった。「させぼ飛躍年隊」の支援をきっかけに、そのメンバーから九州各地のよさこい関係者を紹介してもらい、交流が広がっていたのだ。
「地域は違っても『まちおこし』という旗印は同じ。ライバルであってもよさこいの関係者には地域を越えた団結力を感じるんです。特に九州はそれが強い。地域をより良くしたいという気持ちがひしひしと伝わってくる。だからこそ、それをきちんと表現できる衣装をつくらないといけない」。徳永さんは衣装づくりへの思いは誰にも負けたくないと話す。それは誰よりも当事者の魂を受け止めてきたからだ。

よさこいが築いた和装文化を
さらに成熟させるために

今、徳永さんはよさこい人のニーズに一層応えるため、外注作業の内製化に力を入れている。そのひとつが生地全体にオリジナルの柄やデザインをプリントできる「昇華プリント」だ。内製化することで、より自由度の高いデザインに短期間で対応できる。それにより自分たちの魂をさらに衣装に込めることができると、関係者からの期待が大きい。

一方で、思わぬことも起こっている。よさこいの衣装は、演舞者や衣装専門家がアイデアを出し表現を競う中で、これまでにない現代的な和装ジャンルを築き上げてきた。その魅力が今、多方面で認知されはじめ、新たな展開を見せているというのだ。たとえば、和太鼓チームや書道パフォーマンスの衣装としてよさこい流のスタイルを取り入れる方が増え、徳永さんのところにも依頼が増加している。
「海外でもよさこいが知られるようになり、私たちもオーストラリアの数チームから依頼をもらっています。ドイツの飲食店の和装ユニフォームを手がけたこともありました」。

そんな中、徳永さんが特に注目しているのがエンタメ業界だ。よさこいの衣装はコスプレやアイドル、2.5次元舞台などとも相性がいい。MT企画にもアニメのプロモーション用衣装の相談などが入りはじめており、新たな活路を拓く準備を進めている。ただ、アニメの世界観やキャラクターを再現するためにより細かなオーダーに対応する体制をつくる必要があり、容易ではない。首都圏の芸能プロダクションに営業をかけようと東京に事務所を開設した直後、コロナが流行し3ヵ月で撤退した苦い失敗もある。
しかし、徳永さんは「再びスタートに立った気持ちです」と意気込みを語る。よさこいの演舞者たちの思いが宿り、開花した新たな和装文化。それが広がっていくことが嬉しいし、それによってよさこいに目を向ける人が増えるにちがいない。よさこいをもっと盛り上げたい。徳永さんの胸の奥では“よさこい人”の熱い魂がたぎっている。

COMPANY

株式会社MT企画

806-0041福岡県北九州市八幡西区皇后崎11-6-107
TEL:093-883-9885
URL:https://www.mm-lifespace.com/
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