次の500年への挑戦。
羊羹を次代へ継ぐために。

株式会社 大阪の駿河屋

代表取締役 岡本 全晃さん(左)
取締役 岡本千寿さん(右)

大阪の駿河屋6代目。大学卒業後に一般企業に勤めるが、火事で祖父母が亡くなったことを機に家業を継ぐことを決意。「祖父母の意志を受け継ぐとともに、神様にそうするように言われているように感じた」という。スポーツ好きで、特に小さい頃からラグビーに熱中。ラグビー教室のコーチを務めたこともある。

「大阪の駿河屋」は約180年前、江戸時代の後期に総本家駿河屋から分家し創業した(写真は創業当時のもの)。
総本家から受け継いだ技術や原料へのこだわりを守ると同時に、時代に応じた新たな和菓子も生み出し、関西の和菓子文化の発展に貢献してきた。

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ショーケースにカラフルな小箱が並ぶ。ハイブランド店に足を踏み入れたかのようだが、そこに並んでいるは、和菓子の羊羹。2021年、従来のイメージを覆すような和菓子店が、新ブランドとともにオープンした。

手がけたのは、大阪の駿河屋。その起源は、室町時代1461年に練羊羹を日本で初めて作った総本家駿河屋だ。豊臣秀吉がその羊羹を賞賛し、大茶会で引き出物もとして配られたことから全国に広まり、現在も「羊羹といえば駿河屋」と愛され続けている。大阪の駿河屋は1837年(天保8年)、総本家駿河屋12代目の三男・岡本善三郎が分家して開業した。製法も、原料も、味も本家から受け継いだ伝統を守り続けている。代々伝わる手書きの菓子見本帳もあり、その歴史の重みを感じる。

しかし、現当主の岡本全晃さんは「伝統は、維持するだけでは廃れていく」という。羊羹の需要が減り続けるなか、コロナ禍が追い打ちをかけた。次の100年、500年へ、羊羹を継いでいくために、何をすべきか。岡本さんは、その答えを今回の新ブランド「駿 surugaya」に表した。

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新ブランドのフラグシップとなるのが、小形羊羹だ。スティックタイプという気軽に食べられる形状。ピスタチ抹茶や瀬戸内レモン、黒糖コーヒーといった、興味をそそる斬新な味。従来の羊羹からかけ離れた「新しさ」が目に飛び込む。しかし、よく見ると「夜の梅」や、朱色の「練羊羹」といった、室町時代から変わらない伝統の羊羹も存在感を示している。

革新を加えられた小形羊羹だが、すべての商品の基本的な材料は室町時代と変わらないという。小豆、砂糖、寒天というシンプルな素材だけ。だからこそ「いいものを使わないとすぐにわかってしまう」と岡本さん。「昔から『素材にかなう技術はない』と言われ、最も優れた素材が使われてきました。それは絶対に変えてはならないと考えています」。

新ブランドの「新しさ」の背景には、変わらない「伝統」がしっかりと息づいている。未来に羊羹を継ぐために、岡本さんはこう答えを導く。「伝統とは、ぶれないものを見極めるとともに、革新をつづけていくこと」。旧・新、そのどちらかだけでもない、両方が羊羹の未来をつくっていく。それを結実させたのが、新ブラント「駿 surugaya」だ。

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新ブランドへの想いを確かに動き出した岡本さんだが、最初は職人の反発に苦労したという。従来にない味やサイズ。手間も何十倍もかかる。それは一見、伝統を壊すようにも捉えられてもおかしくなかった。でも、岡本さんは従業員に想いを伝え続け、共に試作を重ねた。「そうするうちに職人からアイデアを出してくれるようになったんです。そんなことを一切言わないような職人が…」。それがとてもうれしかったという岡本さんの笑顔が印象的だ。今では、いかに自分たちの考えが凝り固まっていたかを、職人とともに語り合うことが多いという。

試作は半年以上続いた。数えきれないほどの新しい味にチャレンジした。その中から商品化できたのが、いま店頭に並ぶ6つだ。「今も試作は続けています。これから生まれる商品にもぜひ期待してほしい」と話す。

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商品だけでなく、製造でも、ぶれないものはぶれず、変えていくところは変えていく。現在、新商品を製造していくための新たな機材導入の準備も進んでいる。大阪の駿河屋は、「餡」を自社で作っている。和菓子屋のなかで「餡」を自社製造しているところが1割にも満たないなか、製造にも強いこだわりがある。 そのこだわりが、岡本さんのいう「ぶれないもの」であり、そこに新しさが加わることで、次にどんな和菓子が生まれてくるのか、楽しみでならない。

「昔から羊羹は和菓子の王様でした。和菓子の頂点という誇りを保ちながらも、もっと多くの人に本物の羊羹を楽しんでもらいたい」と語る岡本さん。その目は海外にも向いている。日本はもちろん欧米、アジア、中東、アフリカなどの世界中で、伝統と革新を備えた羊羹が楽しまれている未来を夢見る。

株式会社 大阪の駿河屋
534-0023 大阪市都島区都島南通1-9-14
TEL:06-6924-8122

駿 surugaya
〒530-0038大阪府⼤阪市紅梅町2-17
http://o-surugaya.com/

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