interview

唯一無二の断熱材を製造。
人を育むことが、技術を育む。

株式会社 ヤマトミ 山本 朋宏さん

一般企業に就職し、照明器具の営業を担当。30代から家業に専念し、断熱材製造の礎を築き、2007年に株式会社ヤマトミを創設した。現在は従業員とパートを含め約50名が働くメーカーに成長。今後は工場の増設を検討している。車が大好きで、人の相談に乗るほど、車業界にも精通している。

ヤマトミでは、高い加工技術が求められるガラス繊維を主な材質に用い、特殊断熱材を製造している。ガラス繊維は扱いが難しいため、関西で取り扱っている断熱材メーカーは数社のみ。ヤマトミは独自の技術開発や創意工夫を重ね、他社が追随できない製品を生み出している。

主婦の口コミで広がり
地域の人気の職場となっている町工場

お昼時、ミシンの音がいったん静まり、ランチを楽しむパートさんたちのにぎやかな声が響きわたる。工場内に一歩入って感じたのは、働いている人たちの明るさや温かさ。昼休憩を終えて作業に戻るパートさんたちは作業に打ち込みながらも、私たちを見かけると元気よく挨拶してくださる姿がとても印象的だった。株式会社ヤマトミは、町工場がひしめく大阪府八尾市において、主婦の人気の職場として口コミが広まっている。人手不足が深刻化する製造業では珍しく、労働力の確保に成功している。

ヤマトミが製造しているのは、断熱材。空調などの機器に使用されるものから、包装資材に用いられるものまで、さまざまな断熱材を生産している。用途によってオーダーメイドでの製造となり、手作業での高い技術力が求められる。また、ヤマトミの断熱材の主な材料であるガラス繊維は、皮膚に付着すると痒くなることがあるため、繊細な作業が必要になる。完全機械化が難しいからこそ、製品の質は従業員一人ひとりの“技”にかかっている。「だからパートさんたちをはじめ全員が自分のペースでしっかりと技術を学んでいけることや、誰もが働きやすい環境を用意することを何よりも大切しています」と代表取締役の山本さん。そのパートさんの姿を遡ると、山本さんの母の姿に辿り着く。

母から、パートへ
受け継がれる技術

山本さんが中学生の頃まで、ヤマトミの工場敷地は養鶏場だった。餌代の高騰などにより山本さんの父・富司さんは養鶏業を廃業し、布団屋に就職。それを機に母の正子さんがミシン縫製をはじめた。まずはこたつの敷マット、次に枕カバー…。正子さんのミシン技術が高まるにつれ、注文の数も種類も増えていった。ある時、「このミシン縫製ができる職人がどこにもいない」と飛び込んできた注文も、正子さんは簡単にこなしたという。そのため、難易度が高い断熱材の縫製の注文が来ることも自然な流れだった。当然ながら高い付加価値を生む丁寧な手仕事に注文が増え、断熱材メーカーとしての基礎が築かれていった。 

今、母の正子さんが培った技術が、パートさん一人ひとりに受け継がれている。パートさんの年齢はさまざまで、縫製経験者もいれば、初心者の方もいる。「たとえゼロからでも、時間をかけて学んでもらいます。早くても1年かけて、じっくりと」。母の正子さんが徐々に技術を高めていった姿を間近で見ていたからこそ、技術の習得には「あせらないこと」が大切であると山本さんは考えている。さらに「毎日同じ作業ではつまらないので、なるべく日々異なる作業が行えるようにも工夫しています」と。それは効率的とはいえないが、少しでも作業を楽しんでほしいという願いが先にある。仕事のカタチは、会社からではなく人を起点につくっていく。時間はかかるが、みんなが高い技術を身につけたとき、生産効率は最大になると山本さんは語る。

特殊断熱材で
製造現場の環境を変える

ヤマトミの技術力は、特殊な断熱材の製造を可能にし、中には西日本一の供給量を誇る断熱材もある。一方で、創業時から断熱材需要は排ガス規制が厳しいヨーロッパで多く、ヤマトミの製品の半数は海外向け。パートさんたちの技術は世界でも高い評価を受けている。最近では、培った技術を活かして半導体工場などのクリーンルームに用いるパッキンの製造も手がける予定だ。

そんな高い技術に、山本さんのアイデアが加わり、新たな事業も始動した。それが断熱材の出張工事サービスだ。
各メーカーの製造工場では、高熱の配管が通る場所があり、周辺の空気が80度になることもある。夏場は熱中症の原因となり、救急車を呼ぶことも稀ではない。各メーカーが抱える課題に対して「ヤマトミの断熱材なら改善できるのではないか」と考えたのがきっかけだった。試しに近隣の塗装工場に協力してもらい、配管を断熱材で覆ってみると、周辺温度は3540度に下がった。以来その塗装工場では救急車を呼ぶことはなくなったという。

「製造現場の労働環境を改善できるだけでなく、空調機器の省エネにもつながります。気候変動への対策やSDGsが重視されるなか、当社も断熱材を活かし貢献していきたいです」。ヤマトミの出張工事が、日本の製造現場を人にも地球にも優しい場所に変えていく。

会社のためでなく
家族のために働いてほしい

ヤマトミでは、技術をもっと学びやすくするために、コンピュータを用いた縫製学習システムの導入を検討している。最良な縫製手順などがPC上でビジュアル化され、それに沿いながら効率よく学ぶことができる。作業時間も計測でき、日々のフィードバックも可能になる。

技術は、人から築かれていく。山本さんにはそんな信念があり、人材の育成には惜しみない力を注ぐ。でも、それは決して会社だけのために行っていないと強調する。
「パートさんには、会社のために働いてほしいわけではありません。家族のために、自分のために働いておられることを、私たちは最も大切に考えていきたい。そのために、もっと働きやすくしたいし、技術を確実に身につけられるようにしたい」。

パートさんは、休みの日や時間を自由に設定できる。たとえば、子どもが学校から早く帰る日は午後から休んでも構わない。ヤマトミの働き方や教育方針は、製造業のなかでは非効率で特殊なのかもしれない。しかし「急がば回れ」と、人を大切にじっくり育むことが最大の成長につながると山本さんは考える。

CAMPANY

株式会社 ヤマトミ

〒581-0053 大阪府八尾市竹渕東3丁目107
TEL:06-6709-8994
URL:https://yamatomi-dannetsu.com/

当社支援内容
平成30年度補正ものづくり補助金令和元年度補正ものづくり補助金事業再構築補助金
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