家を好きになってもらい、
未来に誇れる街をつくる。

9 株式会社

代表取締役 久田 一男さん

滋賀県永源寺の農家で育ち、幼い頃からファッションの世界に憧れる。専門学校を卒業後、ファッションの仕事に就くが、才能のかけらもないことに気づき挫折。衣食住のなかの「住」の世界に目を向けるようになり、まずは大工に転身。2001年からリノベーション事業をスタートさせ、これまでに400件以上のプロジェクトを手掛けている。2011年に9(ナイン)株式会社を設立。

移動・設置が容易にでき、空き地や遊休地を有効活用できるコンテナホテル「動くホテル」も特徴的な事業のひとつ。
大阪府泉南市では、「動くホテル」を活用し、海浜エリアをレクリエーションゾーンとして再生させる「パークPFIによるグランピング泉南プロジェクト」を手がけている。

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世界には、地域の伝統が息づいた美しい街が多くある。日本はどうだろうか。古民家は姿を消し、画一的な住宅ばかりが並ぶ。まるで誰もが同じビジネススーツを着ているようだ。9(ナイン)の久田一男さんは「私たちはファッションを捨ててしまった」と話す。

日本では戦後、機能性を優先した在来工法が確立された。その工法を用いた住宅の寿命はわずか30年ほど。築1300年の法隆寺に代表されるような伝統工法を捨て、短スパンで家を使い捨て続けている。住宅資産の価値が、アメリカでは20年後も変わらないのに、日本ではゼロになるという事実は衝撃的だ。古くなれば建てかえればいい。世界では非常識な考えに、なぜ私たちは疑問を感じないのか。

いちばんの理由は「自分の家が好きじゃなから」と久田さんは強く訴える。

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久田さんがそのことに気付いたのは、元々ファッションの世界に身を置いていたことが大きい。専門学校で服飾を学び、ファッションデザイナーになるが、一握りしか成功しない世界で限界を痛感。次に興味を持ったのが「住まい」だった。

まずはつくることから始めるべきだと考え、大工に転身。新築住宅を受注し、自らつくる日々が続いた。ただ、取り扱う図面は面白くなかったという。画一的な間取り。プロヴァンス風といった海外の劣化コピー。地域の気候や特性、生活スタイルに合っていない。世界的なデザイナーでもない他人が内装を考えている。そんな住宅に、なぜ一生住み続けるのだろうか。ファッションから見れば、不思議なことばかりだった。自分の服に興味がないのと同じ、きっと家を愛していないからだを感じたという。

おかしいなら、変えていくしかないと、行動したのが35歳。「住まい」にデザインやファッションを取り戻し、愛せる家をつくろうと、自宅マンションをセルフリノベーションし、モデルハウスとしてリノベーション事業を開始した。 以来、久田さんは大きな目標を抱く。「日本の伝統的な街並みを取り戻せないなら、それに匹敵するような美しい住宅街をつくっていかないといけない。そのために、自分の家を愛してもらい、長く生かしていけるようなシステムつくっていこう」と。

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アイデアも、ファッションから湧いてきた。 たとえば、Tシャツ。さまざまなプリントTシャツが販売されているが、最も購入されるのは白Tシャツではないかと久田さん。住宅には、この白Tシャツにあたるものが見当たらない。他人がデザインしたプリントTシャツのような既成住宅しか選べない。だから愛着を持てないのも当然だ。それなら白Tシャツのように、そのままでもいいし、自らデザインを自由に加えられる住宅があっていいのではと。

そんな発想から生まれたのが「未完成住宅」だ。完成度90%で販売され、床や壁、家具などは自由に選んでコーディネートできる。必要な住宅設備機器は備わり、あとはDIYなどで自分らしく、自分に似合う家に仕上げることが可能だ。

「コーヒーは、気に入ったカップで、好みの豆やスタイルで飲みますよね。でも、住宅は、コップをつくり、豆を栽培して飲むようなフルオーダー型か、あるいは缶コーヒーのような既製品か、その一方を選ぶしかなかった。極端な二者択一ではなく、コップだけを選んだり、豆を変えたり、自分らしくコーヒーを楽しむことできる。そんな当たり前のことを住宅でも出来るようにしたい」と久田さん。自ら家をコーディネートできれば、自分が作った料理がいちばん美味しいように、家がもっと好きになり、愛され続けていくにちがいない。

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もちろん住宅は、コーヒーのようにはいかない。誰もがDIYを得意とするわけではないし、床材だけでも多額の費用がかかり失敗はできない。未完成部分が10%とはいえ、デザイナーと打ち合わせを重ね、イメージをつくり上げていく必要があるが、手間がかかってしまう。 久田さんは、そうした課題を見事に解決するプランも考案し、カタチにした。 それがセルフコーディネートシステムだ。まずは物件を360度カメラで撮影する。その映像にVRシステムを用いて、床材や壁紙、家具などのパーツを自由に選んで配置していく。つまりオンライン上で簡単に内装をコーディネートができるわけだ。これならデザイナーと打ち合わせは一切発生しないし、失敗の可能性も減る。何よりコーディネートを考えることがもっと楽しくなる。久田さんのアイデアとテクノロジーの融合で、新たな家づくりのシステムが動き出した。

「日本は、1000年以上にわたって築き上げてきた伝統的な住宅システムを、戦後に捨ててしまいました。それはとても残念ですが、日本にはもう一度ゼロから画期的なシステムを築き、美しい街をつくっていくチャンスがあります。デザインに関わる人間として、世界に、未来に、誇れる街へリノベーションしたい。それが私の使命だと感じています」。

9株式会社

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9東京:141-0021東京都品川区上大崎2-13-14 M-Haus 2F ink-line

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